気分障害(うつ病、双極性障害など)
気分障害(うつ病、双極性障害など)
現代社会はストレスに溢れています。ストレスがうまく解消されなかったためにで心と体のバランスが崩れ、心身に不調をきたすことは誰にでも起こり得ます。眠れない、食欲がない、一日中気分が落ち込んでいる、何をしても楽しめない、気分がすぐれない、落ち込んでしまう、悩み・心配事が頭から離れなくなる、考えがまとまらず堂々巡りする。そういった気分の不調が持続する状態を抑うつ状態といいます。様々な原因で抑うつ状態となりますが、原因として多いものとしては、適応障害、うつ病、そのほかには双極性障害、薬の副作用、体の病気などによっておこることがあります。
うつ病は、精神的・身体的ストレスが重なることなど、様々な理由から脳の機能障害が起きている状態です。脳がうまく働いてくれないので、ものの見方が否定的になり、自分がダメな人間のように感じられてしまいます。そのため普段なら難なく乗り越えられるようなストレスも、より辛く感じられてしまうという悪循環が生じてきます。 うつ病は生涯に約15人に1人が経験しているといわれています(生涯有病率7.5%)。また、女性は男性の2倍うつ病になりやすいといわれています。
このようなうつ病ですが、薬による治療と精神療法が効果的なことがわかってきています。早めに治療を始めるほど回復も早いので、十分な休息と的確な治療を受ければ、ほとんどの場合それまでと変わらない生活を送ることが可能です。
うつ病の治療には、対話を通して進める精神療法と抗うつ薬による薬物療法があります。うつ病の治療では、まず、心身の休養がしっかりとることが大切です。精神的ストレスや身体的ストレスから離れた環境で過ごすことが治療になります。職場や学校から離れ自宅で過ごし休養を取るだけで、症状が大きく軽減することもあります。薬物療法では、主に抗うつ薬を使用します。症状や年齢、副作用などを考えて患者さんに合わせて処方します。
うつ病は、うつ状態だけが起こる病気のことをいいますが、双極性障害とは、うつ状態に加え極端に活発に行動してしまう躁(そう)状態も現れ、「うつ状態」と「躁状態」を周期的に繰り返す病気のことをいいます。以前は「躁うつ病」と呼ばれていましたが、現在では両極端な病状が起こるという意味で「双極性障害」と呼ばれるようになりました。有病率は1%程度といわれており、うつ病では女性に多いといわれていますが、双極性障害では性別による差は認められていません。また、双極性障害では遺伝的要因の関与が高いことが指摘されています。躁状態では、眠らなくても活発に活動できる、次々とアイデアが浮かぶ、過度に自分では特別に能力が高いと信じこむなどの症状が見られ、軽はずみに無謀な行動を取ってしまう結果、社会生活に支障をきたすこともあります。
また、実は双極性障害であるのにもかかわらず軽い躁状態を見つけられず、うつ病と診断されているケースもみられます。うつ病の治療をしても効果がない、または不十分だった患者さんが双極性障害だったということもあります。
うつ病は「うつを良くする」ことが治療目標ですが、双極性障害は、「躁状態・うつ状態の再発をいかに予防(気分の波をコントロール)するか」が最大の治療目標です。
双極性障害(躁うつ病)の治療では、主に薬物療法や心理社会的治療を並行して行います。薬物療法では、気分安定薬(炭酸リチウム、バルプロ酸、カルバマゼピン、ラモトリギンなど)や激しい躁状態には鎮静効果のある非定型抗精神病薬を使用します。特に炭酸リチウムやバルプロ酸を服用する場合は、副作用が出ないように血中濃度を定期的に測定しながら投与量を決めるなどといった細やかな調整が必要になります。また、双極性障害のうつ状態に対して使う薬は、うつ病の時に使う薬とは違います。抗うつ薬は双極性障害のうつ状態に使用すると、躁状態となることがあるため注意が必要です。
また、病気についてご本人が理解することがとても重要になります。うつ状態はご本人にとってつらいため自覚されますが、躁状態は本人にとっては少し調子がいい程度に受け止められることが多く、病気と自覚されないことがしばしばあります。躁状態では気分の高さに任せて、他の人とトラブルになる、大金を散財するなど、ご本人の社会的な立場や名誉を傷つける可能性があります。そのため、双極性障害であるということ、病気そのものの特徴を理解することが重要になります。そのうえで、自分の気分が上がっている状態なのか、下がっている状態なのか、セルフモニタリングできるようになることで、気分の波のコントロールをしていきます。