ストレス障害(適応障害、PTSDなど)
ストレス障害(適応障害、PTSDなど)
誰でも人間関係や仕事上の問題、家庭の問題などでストレスを感じると、心理面、身体面、行動面で変化が生じます。このような変化をストレス反応と呼びます。ストレスに対する反応が強く、ご本人の日常生活にも支障を生じさせてしまうのがストレス障害です。
ストレス障害には、強烈なできごとの後に発生する急性ストレス障害(ASD)、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、日常生活上の様々なストレスが原因となって生じる適応障害などがあります。
日常生活に支障が出るような症状がある場合は、お気軽にご相談ください。当院では、まずしっかりと症状やきっかけとなった出来事などを伺います。その上で、疾患がどのようなものかを丁寧に説明し、一人ひとりの状況に合わせて回復への治療を一緒に行っていきます。
適応障害とは、日常生活上の様々なストレスが原因となり、憂うつ感、不安、頭痛、不眠、イライラなど、心身に様々な症状が現れて支障をきたす状態をいいます。悪化すると仕事や学業などにいけなくなり、無断で欠勤してしまうなどといった状況もおこります。ストレス因子に対する反応であり、症状はストレスが生じてから3か月以内に出現し、情緒面や行動面で多彩な症状がみられます。うつ病と似たような気分の落ち込みが認められますが、因果関係のはっきりしているストレスがあり、その原因が解決すると症状は次第に改善する点が異なります。そのため、ストレスに圧迫される状況にないときは通常の日常生活が送れることが多く、またうつ病ではあらわれることの少ない攻撃性などがあることも特徴となっています。しかし、この状態を放置して長期化させてしまうと、うつ病に移行してしまう可能性もありますので注意が必要です。
治療の1つとしてストレッサーを取り除くことが挙げられます。例えば、暴言を繰り返す恋人から離れるために助けを求める、休職をして職場環境から一度離れるなどがこれにあたります。ストレスの原因が取り除くことができる、離れられるものであればこれが可能ですが、自分の意志では変えられない場合は本人がその環境に合わせて行動や意識を変えて適応する力を高める方法もあります。その場合は、出来事への考え方を修正したり行動の仕方を変えたりして気分のコントロールを図る認知行動療法などがあります。
急性ストレス障害は英語のAcute Stress DisorderからASDと省略されて呼ばれることもあります。日常的なストレスによって引き起こされるものではなく、事故、犯罪、暴力、戦争、災害など恐ろしい出来事に遭遇するなどによって発症するものです。それは、直接的な出来事と間接的な出来事である場合があります。直接的な出来事には、心身に重篤なけがや死ぬかもしれないといった事故などの経験があげられます。一方間接的な出来事の場合は、目の前で他人に起こった出来事を目撃することや身近な人や友人、家族に起こった出来事などがあげられます。
ASDはストレスを受けた後、しばらくすると発症し、1か月以内には症状が消えていくものです。それより長く続く場合は、次項で説明する心的外傷後ストレス症候群(PTSD)と診断されます。治療としては、ストレス環境から離れることが重要で、支持的な精神療法や認知行動療法、薬物療法を行います。
心的外傷後ストレス障害は、一般的には英語のPost Traumatic Stress Disorderの略語であるPTSDという名で知られています。ASDと同様、事故、犯罪、暴力、戦争、災害などの強いストレスを受けたことがきっかけになります。その体験が本人の中にいつまでも残り、なんども繰り返し思い出してしまうフラッシュバックを起こします。特に、トラウマとなるきっかけになったできごとを思い出すような状況になると、急に感情が不安定になってしまいます。また、そのできごとが起こった場所や状況を回避するような行動にでることがあります。その他には、眠ったり集中することが難しくなる、警戒心をたえず強くしているためにさらにストレスを感じてしまう、感情が麻痺して以前は楽しんでいたことに対する関心が薄れる、といった症状が出現することもあります。PTSDの症状は最低でも1か月以上、長期にわたって続くことが特徴となっています。
治療としては、強い不安にかられること、感情のコントロールができないなど、社会生活の支障となっていることに対し薬物療法などの対症療法を行うことと、トラウマそのものを乗り越えるための心理療法とがあります。